鬼はいるのか? 08:28

今週のお題「鬼」

 

サンタクロースを信じる?というのは子供がする質問の定番だけど、鬼を信じる?というのは聞いたことがないかもしれない。

 

私の通っていた幼稚園では、節分の時期になると先生が教室の窓の外に柊とイワシの頭を飾る。柊の葉のトゲとイワシの匂いが鬼を追い払ってくれるんだよと教えてくれた。

そして組のみんなで豆まき。鬼の役をする人はおらず、生徒も先生も一緒になってワイワイと豆をまく。最後に年の数の豆を食べる。魔除けがどうこうなどどうでもよく、ただただ楽しいイベントのひとつだ。

 

その年も、ひとしきり騒いで豆まきが終わった。床に散らばった豆をみんなで拾う。

窓の柊を片付けようと外に出ようとした先生が声をあげた。窓にしっかりと貼り付けたはずの柊が地面に落ちているという。

「鬼がきて落としていったのかも」

先生が生徒たちに聞こえるように言った。

「柊を飾ってみんなで豆まきをしていたから鬼は教室に入れなかったんだね」

「鬼がもう一回くるかもしれないから柊は飾ったままにしておこう」

先生と、組の中でも積極的な子達がそんな会話をしている。

子供だった私はその時点でやっと、それらの言葉とそこから想像できる鬼というものにゾッとした。鬼は教室に入って来て私たちをどうするつもりだったのか。同時に真昼間のみんながいる教室での出来事で本当によかったと安堵した。柊とイワシがお守りであり、ふざけ半分だった「鬼は外、福は内」と唱えながら豆をまくことが神聖な行為のように思えた。

窓に背中を向けないよう気を付け、外を確認しながら床の豆を拾い集めて豆まきは終わった。その日は鬼が再び私たちを襲いにやって来たらどうしようと落ち着けずに過ごした。

 

なぜ柊は窓から落ちたのだろう。単に取り付けが甘く、風で剥がれてしまったのだろうか。そんなに風が強い日だっただろうか。実は先生が私たち生徒を怖がらせようと一芝居打ったのか。もしかしたら本当に鬼が来て、柊とイワシ、私たちのまく豆を嫌がって逃げ帰ったのかもしれない。

 

鬼、節分、豆まき、そんなワードを耳にすると真っ先に思い出す、今でもほんの少し怖い体験談だ。